エペペペペペ

出版とかアイドルとか

オタクシェアリングから抜け出せる地下アイドルは生まれるか

徳間書店から出版されているアイドル誌『OVERTURE 006』のなかに掲載されている「アイドルプロデューサーの世界」が非常に興味深かったのでメモがてら特筆すべきところをまとめておく。

OVERTURE No.006 (タウンムック)

OVERTURE No.006 (タウンムック)

 

主な構成は運営者による対談に、アイドルや運営者へのインタビュー。特に運営者対談は当然ながらシビアな発言が並ぶ。

特に渡辺淳之介(BiSH、POPプロデューサー)と加茂啓太郎(寺島由芙、フィロソフィーのダンスプロデューサー)の対談は、インディーズの文脈から今のアイドルの可能性や不足している部分、バンドとの対比などが語られていて面白かった。

今のウェブマーケティング、もっと具体的にいえば「バズらせる」ための方法を知りたいならば、BiSHプロデューサーの渡辺淳之介の手法を徹底的に研究すべきだと私は思うが、人集めが生命線のショウビジネス目線でもよく考えられている。

(渡辺)近い人たちは何をやっても褒めてくれるから、ついそいつらを相手にしちゃうんですけど、「前を見るな。一番最前なんてお前らが蹴ったって来るんだから、後ろのやつと目を合わせろ」って言ってますね。(p70より引用)

しかしながら、渡辺と加茂の対談は極めて悲観的なもので、アイドル市場がクローズに向かっていることを指摘した上で、オタク(アイドルファン)以外に向けてどのように発信していくかというところがカギになっていくことを示唆する。

(加茂)やろうと思えば適当にやるだけだでも1日10万15万とか残る仕事ですよ。でも、それだと飽きられちゃうし、伸びていかないから、志あるものをつくっていかないと。(p71より引用)

例えばファッション面でのアプローチをセットで打ち出しているmaison book girlは、サクライケンタが創る変拍子を多用した現代音楽風の楽曲によって色付けされる。歌唱力なり、ダンススキルなりに目を瞑ってもグループとしての世界観が伝わる仕組みができている。それは、アイドルの文脈とは別の文脈ができつつあるということでもある。


Maison book girl / lost AGE / MV

アイドル業界はほぼオタクのシェアリングで成立している。オタクは目の前にいるからわかりやすいが、いずれ相手にしなければいけない人間たちをどれくらい見えているか。それを考えるのが戦略というものである。