九月のスタートは雨であった
九月のスタートは雨であった。ササァと降り注ぐそれは傘を差そうと思うほどの強さはなく、ぼくは駅からの道を足早に帰ろうとした。途中、駐車場の隅っこに茶色いぶちのねこがいて、手を振った。ねこはニャア！と鳴いた。お前には俺の気持ちがまったくわからないよ！ こっちを見つめてトテトテと歩いてくるねこを、ぼくは笑顔で振り切って、家路に戻った。本当、狂ってやがるぜ！
九月のスタートは雨であった。ぼくが九月になって最初にしたことが、「少女閣下のインターナショナル」というアイドルグループの動画をYouTubeで見ることだった。
少女閣下のインターナショナル動画 2015.08.02@目黒鹿鳴館 - YouTube
なんということだ。これはメルヒェンであり、サイケデリックであり、お遊戯会であり、狂気に沈んだ正気であり、曇天であり、新興宗教であり、世界中の飴玉をひっくり返したあとに残る空虚さである。この祝祭的、儀式的な空間の成立過程に興味を抱く。
ワゴン車はぼくの家の前の道路を通り過ぎる。当たり前のように通り過ぎる。ぼくは道路の真ん中に透明な壁を置いておいたのだ。誰も触ることのできない、手すら通過してしまう、透明で巨大な壁を。ぼくの頭の中では、もう十数台のワゴン車が壁に激突している。痛みよ、散らばれ！ 一、ぼくは空虚であり、二、ぼくは野蛮であり、三、ぼくは作為的な分人主義者であり、四、ぼくはモラリストである。
「少女閣下のインターナショナル」の創始者である、里咲りさのソロの曲は素晴らしい。
