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出版とかアイドルとか

ゆるめるモ!の「文学と破壊EP」を買ったよ

ゆるめるモ!は、しっかりとニューウェーブをやってくれる数少ないアイドルグループである。どこか間の抜けたドラミングや軽妙でヘンテコなメロディー、ピコピコした電子音に、お世辞にも上手とはいえない女の子たちのヴォーカルが重なる。正直に言えば、この手の音楽に対して歌の上手さというものを求めてはならない。ある程度の水準を超えていればそれで良いわけで、どれだけゆるい雰囲気を出せるかが勝負なのだ。

作品とは、個々の技術が重なってできたものではなく、いわば構造体である。組み合わせの芸術だ。どれかが突き抜けてしまえばバランスは壊れる。ギリギリのところで成り立つ危うさに、繊細さと狂気を感じるのだ。


ゆるめるモ!(You'll Melt More!)『夢なんて』(Official Music Video) - YouTube

ゆるめるモ!の新作「文学と破壊EP」が8月12日にリリースされた。リードトラック「夢なんて」は作詞作曲がミドリカワ書房ということで発売前から話題になっていたが、爽やかで伸びのあるサビが特徴的な良質なポップスに仕上がっている。

現代の思春期の女子たちの気持ちを描いた歌詞は、ある種ストレートで、「らしさ」が薄いと感じられる部分もある。その裏には、ゆるめるモ!の楽曲の歌詞のほとんどを手掛ける小林愛の感性の鋭さ、独特な言葉遣い、文学的な言い回しの存在感があることに他ならない。小林の描く歌詞は絶妙な形でこのグループに嵌っていることを改めて思い知らされる。


ゆるめるモ!『アーメン』20140718@EX THEATER ROPPONGI - YouTube

「Electric Sukiyaki Girls」に収録されている「アーメン」の歌詞を読んだとき、震えたよ。「どこにいたって鐘鳴らせ 雨に負けないつもりだよ 風には負けちゃうかも えへへ あー傘が飛んでく」というサビの一節、どうやってこんなん考えたんだ。曲を通して「えへへ」というワンフレーズの破壊力が凄まじく、一つの詩として高く評価されるべきであると思う。

「文学と破壊EP」は「夢なんて」のほかに「Refresh your jewellery box」と「Only You」の2曲が収録されている。「Only You」はツインドラムが映えるロックナンバーで、Number Girlを彷彿とさせる。ライブで聴いたら気持ちいいだろう。ただ、破壊的なアレンジの裏にある狂気は研ぎ澄まされたものではなく、むしろ柔らかなものであるように感じた。そういう意味では、多くのリスナーが自分自身で消化できる楽曲なのかもしれない。